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同僚は宇宙に行った・・・:小説 #イメチェン小説

会社の同僚の美樹ちゃんが、最近攻めている。攻めているのは誰かを攻撃しているんじゃなくて、自己表現が過激になった、ということだ。

美樹ちゃんはリケジョで同期の中でもあまり目立たない存在だった。入社3年目の僕らは時々「定例会」と称して同期で飲み会をするのだが、彼女はいつも席の一番隅っこに座って、ソフトドリンク片手にずっと枝豆を食べていた。話しかけても基本敬語で応答するのでなんとなく近寄りがたい存在だったのだ。

しかし最近彼女が変わった。髪型を両サイド刈り上げの、何ていうんだろう、テクノカット(?)のようにして色も緑がかっている。まるで宇宙人のようだ。服装も以前は基本、婚のスーツ風のものだったのに高そうなブランドの服を身につけるようになった。こっそり上着のタグを覗いたら、JIMMY CHOOと書いてあった。街で見かけたことのあるブランドだけど以前の彼女からは想像できない。僕の会社はいわゆるIT系の企業なので、外回り営業のない彼女は服装自由ではあるけれど、あの出で立ちでPCの前に座られると、どこの誰と交信しているのかと疑いたくなってしまう。

そんな彼女とある日二人っきりなった。
 その日僕は外回り営業が長引き、会社に帰ったのが9時を回ってしまっていた。働き方改革で6時には全員退社するように、という業務命令なので、会社には誰もいないと思っていたが、ほとんどの明かりを消したOFFICEのなかで彼女は一人PCのまえに座っていた。僕が入ってきたのにも気づかない様子で、頭につけたPCのヘッドホンのマイクで誰かと話し込んでいる。後ろからPCの画面をそっと覗くと、そこには・・・・

髪をピンクにしてフリフリの衣装を着た女の子が、真剣な表情で彼女と話している!

物音に気づき彼女は驚いたように僕を振り返った。

美樹「ああびっくりした!こんな遅くまで残業ですか?」
僕 「そっちこそ、帰らなくていいの?」
美樹「家のPCが調子悪くって、会社のをちょと借りちゃっていったんです。みんなには内緒にしてください」
僕 「僕が言わなくてもPCに履歴がのるからバレちゃうでしょう?」
美樹「そうですね。会社に迷惑かけてはいけませんね。」

通信を切ってヘッドホーンを外し、彼女は僕に向き合って通信の相手の話をしてくれた。

実は、彼女は以前から秋葉原通いが趣味で、地下アイドルをやっていた時期もあったそうだ。通信の相手はその時の同じグループの娘だという。最近観客の入りが悪くて、どうしたらいいか彼女に相談していたという。美樹は衣装デザインなども自分でやっていたらしく、グループの中心的存在だったようだ。

美樹「この会社はとても働きやすいけれど最近ちょっとちがうなと感じていたんです」美樹は突然会社への不満を言いはじめた。
僕 「でも、働くってそういうことでしょう?何もかも思い描いたとおりにはならないよ」
美樹「わかっています。けど私、今やってみたいことを見つけてしまったんです」
僕 「地下アイドルのこと?」
美樹「はい、でも今度は演者でなくプロヂューサーをやってみようと思います」
僕 「スポンサーとかいるの?」

美樹「特定の人がいるわけではないのですが、最近作ったグッズがネットですごく売れたのでクラウドファンディングで資金集めて、また新しいのを販売しようと思っています」
僕 「最近景気良さそうだと思ったらそういうことだったのか!」
美樹「そんなふうにみえていましたか?私はなにも変わってはいないんですけど・・・」

それから1ヶ月後、彼女は会社をやめてしまった。彼女の言っていたグッズをサイトで検索したら、思っていたよりデザイン性のあるスマホのカバーやPC周辺機器などがあり、僕も思わず注文してし
まった。

地下アイドルにハマってしまわないようにと気をつけている今日この頃である。

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