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Adore:小説 #イメチェン小説

都内の女子校に通うA子は、同じ学校に通う先輩のB子に以前より憧れを抱いていた。B子はモデルの仕事をしていて、校内でもみんなからの憧れの的だった。それに比べてA子は、どちらかというと目立たない存在で、地味な高校生活を送っていた。
ある日のバイト終わり、 A子が駅のホームで電車を待っていると、ホームのベンチに座る1人の女性に目が止まった。凄く綺麗で、気づけば見とれてしまっていた。少しして、それがB子であると気づいた。
A子は、普段は遠くから眺めているだけのB子に近づき、勇気を振り絞って話かけた。
「あの…。私、B子さんと同じ学校に通うA子といいます。ずっとB子さんに憧れてました」と言うとB子はにっこりと微笑んでくれた。
その日、A子とB子は一緒に帰ることになり、電車の中でB子はA子に、「髪型を変えてみたら」とまるで自分の妹に接するみたいに、優しく言ってくれた。もう少し短い方がきっと可愛いよと教えてくれたのだ。
A子はB子と話が出来ただけで嬉しかった。それだけではなく、髪型のアドバイスもしてくれて、B子のことがますます好きになった。
A子はすぐに髪を切りに行った。ずっと伸びっぱなしになっていた髪を、肩のあたりまで切って、B子と同じようなボブヘアーにした。なんだかB子に少しだけ近づけた感じがして、嬉しくなった。
あの一緒に電車で帰った日以来、A子とB子は仲良くなっていて、B子は髪を切ったA子を見て、すごく可愛いと褒めてくれた。A子はもっとB子に近づきたいと真剣に思った。
それから、A子はB子に、「もっと自分を変えたい」と自分の心の内を打ち明けた。B子は快くA子の気持ちを受け入れてくれて、色々アドバイスをくれた。少しカラーをしてみたらどうか、服はシンプルなものの方がA子には合っているなど教えてくれた。
B子のアドバイスの甲斐もあって、A子は見る見るうちに綺麗になった。B子はそんなA子を見て「あなたは自分の魅力に気づいていなかっただけ」と言った。
確かにイメチェンして以降、みんなのA子を見る目が変わった。みんなA子に注目するようになり、A子自身も自分に自信が持てるようになった。
そんなある日、B子は、今度モデルのコンテストがあるから一緒に応募してみようよ、とA子を誘った。A子はさすがに戸惑った。いくらなんでもコンテストなんて無茶だと思ったからだ。でも、B子はどうしてもと言って引き下がらなかった。
結局、B子の熱意に負けて、A子はコンテストに応募してみることにした。A子はどうせすぐに落選するだろうと考えていた。
しかし、第1審査を突破し、その後第2、第3審査と突破して、ついには最終審査まで進むことになった。最終審査にはB子を含む5人が残っていた。
B子はA子が最終審査まで残ったことをとても喜んでくれていたが、A子はあまり喜べずにいた。憧れのB子と争うことが嫌だったし、もし仮に、自分が優勝するなんてことになったら、自分とB子の関係はどうなってしまうのか心配になっていた。
最終審査の日、B子は「お互いに頑張ろう」とA子に言った。
「はい」とA子は静かに答えた。
緊張の最終審査が終わり、B子はA子に近づいていき、「優勝はあなただと思う」と一言A子に言った。
結果は、B子の言う通りだった。A子は優勝した。審査員から結果が発表された時、A子は心からB子に感謝した。それと同時に、B子を超えてしまった申し訳なさから、素直に喜べずにいた。
そんな複雑な気持ちのまま、チラッとB子の方を見た。B子は目に涙を浮かべていて、A子の視線に気づくと、優しくにっこりと微笑んでくれた。

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