この映画では、情緒不安定なごく若い女性ベティが、好きな男性、俳優ジャン・ユーグ・アングラード演じるゾルグに出会って懸命に愛する様子を、女優ベアトリス・ダルが好演します。
彼女が自ら自分の髪をバッサリとごく短く切り落としてしまうシーンは、観る者に、彼女を急き立て続ける落ち着かなさ、苦しさから救い出したいと感じさせる、印象的なシーンです。
もともとロングヘア―ではなかったものの、豊かなミディアムヘアには艶があり、真っ赤なドレスがよく似合っていたベティです。
不揃いな短髪姿になってしまった彼女には、しかし、一層の美しさが加わります。
自らを解き放った美しさ、というのでしょうか。
私は時折、自分で、髪の毛をカットすることがあります。
前髪だけでなく、後ろまで全てです。
丁寧にハサミを入れているうちに、だんだんとスピード感が出てきて、ノッテくる、というのでしょうか。
そして、「ま、多少、不揃いでもいいかな」、と感じ始める頃、一瞬、いつも、この『ベティ・ブルー/愛と劇場の日々』で、ベティがひとりで髪を短くするシーンを思い出すのです。
そして、切り終わり、私なりのイメチェンに成功し、すがすがしい気持ちがしているのに、同時にベティのことを考えるとちょっと切ない気持ちになります。