私はずっと「女は髪を長く伸ばすのが普通」という常識に疑問を感じていました。
とはいえ、ずっと女として育ってきて、小さい頃は、親の方針でショートヘアにさせられていて、おまけに中学生のころに、小学校高学年の時から少しずつ伸ばしていた髪を、シラミがいる疑いをかけられて、泣く泣くばっさりと切られてから、ますます長い髪に対する執着がひどくなってしまい、20歳になるまで、腰より長いロングヘアーを維持していました。
社会人として働き始めてからは、少し短くはしましたが、あいかわらず長い髪をまとめ髪にして、仕事が忙しくなるにつれて、正直手入れが面倒だと感じることもありつつ、ずっと伸ばしてきたために、バッサリ切ってしまうのは惜しくて、「まあ、朝まとめるだけで、寝癖を気にする必要もないし、スタイリングもしなくていいのは返って楽だしな」と、なかなか切れずにいました。
そんな時、不運にも性犯罪の被害に遭ってしまい、おまけにセカンドレイプまでされて、いわゆる、「お前が不注意にも夜道を独りで歩いているからいけないんだ」というような咎めまで受け、それを真に受けて、外出することを恐ろしく感じ、しばらくは仕事にも行けない状態が続きました。
貯金が尽きると同時に捨て身になって風俗に勤めたりと、しばらく荒れた生活がつづいたあと、幸いにも親しい友人の援助もあって、昼間の仕事に戻ることができたのですが、前のように女らしい格好をすることはできず、伸ばしていた髪も丸坊主にし、メイクもせず、パンツスタイルで、顔はサングラスで隠して、徹底的に防御するようになりました。
背が高いので、体のラインが出ない服を着ていると、パッと見、性別不詳だとよく言われます。
刈り上げの髪型にしてよかったことは、何といっても手入れが楽。
シャンプーやコンディショナー、整髪料やヘアアクセサリー、美容院などへの出費が一切なくなり、節約にもなるし、体と一緒に髪も洗ってしまえるから、時短にもなる上、髪が長かったときのように、「毎日洗うと傷むから」と髪を洗わない日をもうける必要がなく、いつも清潔な頭の状態でいられるので、気分がいいです。
シャワー後に頭だけが汚い不快な感覚とさよならできました。
今は、死んだ細胞である髪をずっと顔の横にぶら下げておくなんて不潔だと思ってしまうし、他の人の長い髪に蓄えられたムッとした香料と皮脂と汗のまざったにおいが苦手になりました。
髪で顔を隠すことができないので、自然と表情が豊かになり、表情筋が鍛えられたのか、小顔にもなりました。
普段の手入れも、自分でバリカンとはさみでカットするだけで、どう見えるか一々確かめながら慎重におこなう必要もなく、とても楽です。
なにより、「女は髪が命」みたいな古い観念から脱却できたのが最大のメリットです。
そもそも、私がベリーショートだからおかしいと批判をしてくるような古い価値観の人とは付き合いません。
どんな髪型でも私は私です。